北海道演習林の9人の利益を守り、同時に不利益変更を安易に許さない貴重な前哨戦での勝利
(経過の概要)

2004年11月2日 九州大学教職員組合執行委員会

1.現行の寒冷地手当を最終的に4割削減する今回の提案は、極寒冷地に居住する北海道演習林教職員9人とその家族の生活に関わる問題であり、同時に4月に制定されたばかりの就業規則の拙速な不利益変更であり、執行委員会は、絶対許されない問題と位置づけ、団体交渉に臨んだ。
 また、農学部支部は、数日間の取り組みで98人から反対署名を集め、団体交渉時に当局に提出した。

2.団体交渉では、就業規則を改定するには、提案から改定まで充分な時間が保障されておらず、組合との団体交渉も充分尽くされていないこと、並びに各事業所の過半数代表者が、当該事業所の教職員に寒冷地手当削減の内容を説明し、それについて意見を集約し、意見書として提出するにはあまりにも時間が保障されていないこと等を明らかにし、今回の提案が手続き上も認められないことを主張した。

3.さらに、論戦では、北海道演習林が、極寒冷地に位置しており、少なくない職員が九州からの人事異動のため暖房機器の購入から自動車の寒冷地向き整備など多くの出費を余儀なくされていること、今回の引き下げ提案にあたって当局は、現地の状況について、事前に調査しておらず、該当職員の生活実態に即して提案しているとは思われないこと等を主張した。
 また、最高裁の判例として既に確定し定式化されている就業規則の不利益変更の4要件(注1)からすると、寒冷地手当を引き下げる(不利益変更する)合理性がないことを指摘し、当局の見解を求めた。

4.早田労務担当理事は、就業規則を改定し寒冷地手当を引き下げることの合理性について、次のことを中心に主張した。
@非公務員型の大学法人の給与等は、独立行政法人通則法第63条(注2)により「法人の事業の実績」と「社会一般の情勢」に適合したものであることが規定されていること。「社会一般の情勢」とは、人事院勧告の内容と考えられること。
A大学移転の予算など付けてもらう上で、文科省の意向にそうことが大切であり、人事院勧告に従わないとペナルティーを課されることになること。B大学法人は、60%以上国費によって賄われており、普通の民間企業の就業規則の変更問題とは、異なる取扱いであるべきで、不利益変更の4要件は該当しないのではないか、との判例上認められていない特異な論理を展開した。

5.10月26日の第1回団体交渉は、双方激しい論戦にかかわらず一致点を見いだせないまま決裂した。
  書記局は、第一回交渉を総括し、同日20時に次の申し入れを行った。
@第2回目の団体交渉に直ちに応じること。A第2回団交の結果によっては、本組合として地方労働委員会に対して斡旋の申請を行う。B斡旋の申請を行った時点で、就業規則変更の手続きは直ちに停止すること。

6. 10月27日13時30分、第2回団交申し入れに応じて、戸川就業支援室長から次の提案があった。
当局回答:昨日、組合交渉の事情説明と今後の対応について役員と協議した。寒冷地手当についての教職員への説明の不十分さ、過半数代表者への意見聴取の遅れ、組合交渉の遅れと合意に達しなかったこと等手続きに不備があったので、今年度は見送ることにしたい。このことは、27日開催の役員会で了承された。今後については、教職員への説明も十分に行い、組合との交渉も早めに行ってつめていくことにしたい。この結果についての全教職員への説明はHPで行う。また、過半数代表者へは、この結果をふまえてこちらから説明を行う。
組合は、この回答を受け入れ、地方労働委員会への斡旋申請を取りやめた。

7.寒冷地手当の引き下げを16年度については実施させないことで決着した今回の結果は、北海道演習林の9人の利益を守ったと同時に不利益変更を安易に許さない貴重な前哨戦での勝利と位置づけられます。団体交渉で激論を交わした不利益変更の合理性の当否については、来年に持ち越され、来年の寒冷地手当、そして地域給が人事院勧告されることになれば、全教職員を巻き込んだ本俸の引き下げ問題として、不利益変更をさせない大規模な闘いになるものと思われる。


(注1)就業規則の不利益変更については、最高裁判所の判例があり、もし変更するとしても4つの要件を満たさないとできないようになっている。
@ 変更により労働者が被る不利益の程度=変更による直接の不利益の程度、代償措置の有無・程度等
A 変更の必要性
B 変更の社会的相当性=同業他社の扱い、多数組合の対応等
C 変更手続きの相当性=労働組合との交渉の経過、反対労働者への対応の状況等 
 この中で特に重視されるA変更の必要性とは、その変更をしないと大学の経営が財政的に困難になるなど具体的な必要性が求められている。今回の寒冷地手当引き下げが、大学の経営に影響があるとは到底考えられない。

(注2)独立行政法人通則法第63条は、「非公務員型である大学法人の給与等は、@法人の業務の実績とA社会一般の情勢に適合したものであること。」と規定している。
しかし、これを根拠に「社会一般の情勢」とは、人事院勧告と考えられるとするのは論理の飛躍がある。因みに、公務員型の給与の基準は、独立行政法人通則法第57条で、@国家公務員の給与A民間の給与B法人の業務の実績C中期計画の人件費中期見積りと規定されている。公務員型であれば、国家公務員の給与=人事院勧告に準拠すべきとの主張は可能であるが、 「社会一般の情勢」とは、人事院勧告と考えられるとするのは妥当であろうか。